無料のおもしろネタ画像『デコじろう』用アイコン02 障碍者(しょうがいしゃ)と触れ合う中で得たもの ―「府中子ども放送局」を制作して―   

経済学部経済学科三年 菅野清

この活動を行うまで、私たちは障害者という表記に「害」という字を使用していた。しかし、障「害」という文字には、マイナスイメージがあるという理由で、特別支援学校の先生方は、「碍」を使用している。「碍」という文字は、常用漢字表にはないが、本稿では、その意味を踏まえて、「碍」の字を使用したいと思う。

二〇一一年一〇月から二〇一二年一月の約三ヶ月に渡り、東京都立府中特別支援学校の高校一年生~三年生の生徒五人と「府中特別支援学校放送局」の活動を行った。府中特別支援学校は、二〇一二年度から、隣接する東京都立朝日特別支援学校と合併し、東京都立府中けやきの森学園になるため、二〇一一年度で閉校する。今回は、大学生が肢体不自由の生徒をサポートしながら、閉校記念「学校紹介ビデオ」の制作を行った。マイクを持ってリポートしたのは、生徒たちだった。

FLP松野ゼミでは、以前、二〇一〇年度に東京都立城南特別支援学校で障碍を持った児童と映像制作を行ったことがあった。その時、お世話になった江見(えみ)大輔(だいすけ)先生(中大法学部OB)が府中特別支援学校へ転勤され、府中特別支援学校でも映像制作を行いたいとのことで今回の活動が実現した。

先輩たちが制作した前回のVTRは、見ていた人がみんな感動するほどの素晴らしい作品で、「第一回筑紫哲也賞」も受賞した。今回は私がプロデューサーを務めることになり、前回以上の物を作らないと、と意気込んでいた。また、障碍を持った生徒たちが、映像制作に積極的に参加することで、自分を表現する楽しさや喜びを感じてほしい、そして、それを自信につなげてくれたら...とも、思っていた。

ところが、私は障碍を持った人と接したことがない。もちろん、他の大学生も同様だ。伺ったところによると、生徒の障碍も多岐に渡っているということだった。その中でも、一番の心配は、会話ができない、あるいは会話が困難な生徒たちがいるということだった。五人のうち三人は普通に会話が出来るが、一人は文字盤を使って一つ一つ文字を示すことでしか会話できない。もう一人はこちらからの質問に対して、「はい」か「いいえ」を身ぶりでしか表現できない。どのように学校紹介をしてもらうか、活動前、学校の先生や制作スタッフと何度も打ち合わせを重ねた。しかし実際に生徒と会うまで不安でいっぱいだった。最初の意気込みはどこかに行ってしまっていた。

初めて特別支援学校を訪れた日、たぶん私は極度の緊張と不安で、暗く、こわばった顔をしていたと思う。胸の鼓動が、聞こえそうだった。

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▲ 「嵐が好き」と語るリポーターの生徒
「おはようございます」。元気いっぱいの挨拶と共に、生徒たちが教室に入ってきた。鼓動が高鳴る。でもゆっくり見渡してみると、みんなニコニコしながら私の方を見ていた。彼らにつられて、思わず私も笑顔になっていた。その時、私ははっとした。彼らは最初からまっすぐな目で私達を受け入れてくれている。私は何を怖れていたのだろう。深呼吸してから、自己紹介をした。そして、活動の内容を伝えると、わいわい言いながら、生徒達はたくさん質問をしてくれた。この活動を心待ちにしてくれていたことが、ひしひしと伝わってきた。全員がそれぞれの表現方法で、一生懸命やりたいことを私達に伝えてくれた。いつの間にか私の中にあった不安や緊張も、きれいに消えて無くなっていた。あっという間に時間は過ぎ去っていた。

撮影が始まると、生徒達はカメラを前に初めは緊張しながらも、中庭や校舎の屋上など、一生懸命自分のお気に入りの場所のリポートをした。言葉がうまく出せない生徒も、文字盤で会話する生徒も、大学生のサポートを受けながら、自分なりの表現方法で、精一杯伝えてくれた。彼らの頑張りや意欲に、私達大学生の方が圧倒された。

そして今回の活動の中で印象的な場面があった。学校の先生へのインタビューで、生徒の一人が、「好きな芸能人は誰ですか?」という質問をした。先生の「島倉千代子」という答えに一瞬きょとんとしたが、彼女はすぐに笑って「私は嵐が好きです」と答えた。私はその時、ありのままの17歳の素顔を見たように思った。私の心は、ほんのり暖かくなった。そして同時に、私は大切なことに気付いた。私は今まで障碍を持っているという理由で、彼らのことを、私たちとは違う「特別な人」という勝手な線引きをしていたのだと。しかし実際は、私たちとは何の変わりも無い普通の高校生だ。そして、しっかりと自分の意思を持ち、自分で考え、自分で行動する一人の人間なのだ。それが分かって、彼女との距離がぐっと近づいた気がした。

撮影、編集作業を経て、約二〇分にも及ぶ学校紹介ビデオが完成した。そしていよいよ上映会当日。学校中の児童や生徒、先生、保護者、大学生が集まり、教室は満員御礼だった。上映が始まると、教室は、たくさんの笑顔で溢れかえった。自分が映っているVTRを見る生徒の目は、やり遂げた充実感に満ち溢れていた。

「障碍」とは何か。活動中、私は何度も考えた。私たちと少し違うことと言えば、表現の仕方や肢体に少し不自由があるくらいだろうか。しかし、私なりに言えば、「障碍」とは、私たちの心の中にある障碍への偏見や壁だと思う。ハンディキャップを抱えながらも精一杯生きる彼らの姿に、私自身多くのことを学んだ。この活動をしなければ、多分彼らに会うことも、私自身が変わることもなかっただろう。活動を終えた今、彼らとの出会いに、私は心から感謝している。
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by tamatanweb | 2012-08-01 00:00 | 府中特別支援学校放送局

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