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無料のおもしろネタ画像『デコじろう』用アイコン02 多摩探検隊の作り方~学生の苦悩とその舞台裏~   

総合政策学部政策科学科プロフェッショナルコース三年 添川隆太

 多摩探検隊は今年の五月に放送開始から一〇周年を迎え、私は「一〇周年記念番組」のディレクターを担当した。今回は多摩探検隊という番組がどのようにして作られているのか、改めて皆様にご紹介したいと思う。

 多摩探検隊は一〇分間の地域再発見番組であり、一本の番組の制作には平均で約半年掛かる。番組にもよるが、短いものでは二ヶ月、長いものでは一年半を掛けることもある。

 番組の制作には、大きく分けて四つの工程がある。

 最初に行うのは「企画」だ。この作業は言葉の通り、番組にしたい題材を見つけ、企画を立てることだ。多摩探検隊では、毎回多摩地域に根差した話題や人物などを企画にして番組を制作している。これまでに制作したものには、野菜や果物を大学生がリポートする番組や、職人に密着したドキュメンタリー番組などがある。また、毎年八月には多摩地域の戦争の証言や記録を集めたドキュメンタリー番組を制作している。

 様々な題材の番組を放送している多摩探検隊には、統一されたポリシーがある。それは「Act Locally、Think Globally」というものだ。毎回、番組は多摩地域の話題を取り上げているが、日本全国や世界に通じる普遍的な広がり、視点を盛り込むように努力している。

 企画の次に行うのは「構成」だ。構成とはどのような順番、流れで番組を作るのかを考える作業のことをいう。構成段階では構成表というものを作り、ゼミの制作会議で先生やゼミ生から厳しいチェックを受ける。ここで指摘された問題点を克服できなかったり、取材対象者からどうしても撮影許可が下りなかったりして、この段階で企画がボツになってしまうこともよくある。私が制作した一〇周年記念番組も構成表のチェックをなかなか乗り越えることができず苦労した。「視聴者に何を伝えたいのかわからない」「この番組は何がニュースなのか」という指摘を受けた。公共の電波に乗せて放送される番組である以上、放送法を順守して責任を持って、有意義な番組を制作しなければならないのだ。

 構成が固まってから「撮影」を行う。撮影はやり直しがきかないため毎回真剣勝負となる。一〇周年記念番組では、一〇年の間に多摩探検隊に出演していただいた方を訪ねて撮影時のエピソードや番組の反響を語っていただいた。その中で、日本でただ一人の顔面紙芝居という芸を持つパフォーマーや、六九年前にB29が墜ちた山に慰霊碑を建てて追悼を続けている男性などにお会いした。このことは、大学内で机に向かっているだけでは得られない貴重な経験となった。特に、慰霊碑を建てた男性からは、平和であることの尊さや戦争の現実を学び、証言を記録することの大切さを学んだ。

 そして、撮影を終えた後は、撮れた素材を確認し「編集」に入る。大学内の演習室にこもって編集作業を行う。編集を終えたVTRは、ゼミの制作会議でチェックを受ける。先生やゼミ生からの厳しい指摘を受けて編集を何度もやり直し、ようやく一本の番組が完成する。

 完成した番組は各ケーブルテレビ局に納品して放送するほか、WEB上の番組ホームページでも配信している。

 四年間の大学生活の中で半年という期間はとても貴重な時間だ。私は昨年一〇月に企画書を作成し、番組が完成したのは翌年の四月だった。半年の番組制作期間においてゼミ生との激しい議論や先生からの厳しいご指導があり、自信を無くしたり、番組制作を辞めてしまいたくなったりしたこともあった。しかし、最後に番組が完成した時、それまでの苦労が全て報われたように感じた。努力した結果が番組という形で確実に残るため、自分にとっての大きな自信につながった。

 多摩探検隊をまだ見たことがないという方はぜひご覧いただきたい。私たちの汗と涙の結晶です。


by tamatanweb | 2014-09-01 00:00

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