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無料のおもしろネタ画像『デコじろう』用アイコン02 児童劇に秘められた平和への思い   

法学部法律学科 平成26年度卒業 幸田遥平

 「青い眼をした お人形は アメリカ生まれの セルロイド・・・」

 一九二一年に発表された『青い目の人形』という童謡の歌詞である。『赤い靴』と同様、戦前特有の異国情緒あふれる童謡だ。祖母が料理の支度中に口ずさんでいるのを、私は聞いたことがあった。祖母によると、当時の子どもはみんな歌えたという。
 今回の多摩探検隊は、一九二一年の『青い目の人形』プロジェクトに隠された日米間の悲劇と交流を追ったドキュメンタリーとなっている。私が辿った制作の道のりについて、ご紹介したいと思う。

 同プロジェクトは八八年前の事柄であるため、話を伺える取材対象者を見つけるのに苦労すると予想していた。私たちは闇雲に青い目の人形に関する資料がある、いくつかの資料館へ赴いた。初めに訪れたのは、青い目の人形を題材にしたアニメーションを定時上映している埼玉平和資料館であった。アニメーションを見終え、本の資料を読み漁っていると、多摩地域では八王子市立第八小学校と、東京都檜原村立小学校および東京都あきる野市立戸倉小学校(二〇一三年三月三一日に閉校)に、青い目の人形が保存されていることを発見した。

 そこからさらに、取材対象者を探し出し、ついに、同プロジェクトを始めた米国人宣教師、シドニー・ギューリック氏の孫、および日本側の渋沢栄一氏の孫を探し出すことに成功した。取材対象者が多かったために、私たちは三人で分担して取材対象者と関係を築くように努めた。そこで私は、檜原小学校と第八小学校の二校と密に連絡を取った。

 第八小学校の彦坂和宣校長先生に何度かお会いすると、青い目の人形(メアリー)を使って、積極的に平和学習を行っている教師を紹介して頂いた。私は青い目の人形に関する授業が、現在も行われていることに驚いた。実際にその担当教諭である門田智子先生にお会いすると、私たち学生が青い目の人形に興味を持ったことを歓迎してくれた。

 門田先生は、青い目の人形が贈られた当時の歴史背景から、現在に至るまでの経緯を冊子にまとめられていた。そして、児童たちがその冊子で青い目の人形について理解してから、児童劇の制作に取り掛かったという。実際に一昨年行われたその劇を、DVDで見させていただいた。私は思わず全身に鳥肌が立ってしまった。その劇には、見事に「青い目の人形」の悲劇と平和への思いが描かれていたからだ。八〇年以上も前の事柄で、もう風化しつつあると勝手に思い込んでいたものが、時空を超えて、プロジェクトの精神が今も受け継がれていることに感動した。

 「自分の受け持った児童が素直で前向きで賢いから出来ると思いました。また教員のやることを認めてくれる寛大な校長先生の下であったからこそ、劇を作り上げることが出来ました」と、門田先生は話した。

 ドキュメンタリー制作は地味で体力的にも精神的にも疲れる作業が多く、「一体何のために作っているんだろう」と何度も悩むことがあった。しかし、私たちが制作したドキュメンタリーが誰かの心に届き、私の知らないところまで、平和への想いが広がっていったら、こんな素敵なことはないと思う。


by tamatanweb | 2015-07-01 00:00

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