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無料のおもしろネタ画像『デコじろう』用アイコン02 終戦直後の日本を走った電気自動車「たま」-その知られざる歴史と熱い思い   

総合政策学部国際政策文化学科3年 神野菜々

近年、電気自動車やハイブリッドカーをはじめとするエコカーが注目されている。しかし戦後間もない日本で、電気自動車が普及していたことを知っている人は、どのくらいいるのだろうか。
戦後、米軍の占領政策によって、日本は飛行機の製造を禁止された。職を失った立川飛行機のエンジニアは、「飛行機がだめなら、自動車を開発しよう」と、1947年に電気自動車「たま」が誕生した。多摩地区で開発されたので、そう名付けられたという。
「たま」は、当時、日本全国で走っていた自動車の約8分の1を占めるほど普及し、主にタクシーとして利用された。
「たま」の物語をドキュメンタリー番組にすることができないか―。総合政策学部松野良一ゼミに企画を持ち込んできたのが、当時(2015年)同学部3年の宮下敬さん。自動車部に所属し、「たま」に興味を持っていた。自動車に詳しい宮下さんがリポーターを務め、私がディレクターとして番組を作ることになった。
私たちはまず、「たま」の歴史について知るため、デザインから開発までの全てを行った田中次郎さん(98)=東京都杉並区在住=のもとを訪れた。のちに日産自動車の専務、日産ディーゼル工業の副社長を務め、日本自動車殿堂入りを果たしている方だ。
田中さんは、「たま」が開発されたきっかけについてこう語った。
「ガソリンは統制されていて入ってこない。しかし、山間部の水力発電施設は難を逃れ、電力は余っていました。そこで、電気を動力とする電気自動車を開発することにしました」
しかし、1950年になると状況は一転する。朝鮮戦争が始まり、軍需によりガソリンの輸入が解禁されると、ガソリン車が急激に出回るようになり「たま」は次第に姿を消していったという。
私たちは「たま」がどんな車であるか知るために、車両が保存されている日産座間事業所を訪れた。
「たま」は、2010年に、日産社員有志の「日産名車再生クラブ」によって、開発当初の姿にレストア(修復・再生)されていた。私たちは、クラブの代表である木賀新一さん(50)にご協力いただき、撮影を行った。「たま」には、飛行機のタイヤカバーをモチーフにしたフェンダー(タイヤ部分を覆う泥よけ)をはじめとして、飛行機のエンジニアならではの革新的なデザインが散りばめられていた。
取材は決してうまくいったわけではない。とりわけ座間事業所では大きな壁にぶつかった。2時間で全ての撮影を済ませなければならず、私は一人で焦ってしまい、撮影スタッフに、テキパキと指示を出すことができなかった。ディレクターが現場を仕切れないと、そこにいる全員の動きも止まってしまう。リポーターをはじめスタッフを生かすも殺すも、全てディレクター次第であるということを学んだ。
撮影が終わり、編集に入ってからも行き詰まった。あまり自動車に興味のない人でも、見てもらえるような内容にするためにはどうすればいいか。開発者の田中さんや、「たま」を再生させた日産の方々の情熱とこだわりをどうやって伝えるべきか。朝から晩までパソコンと向き合い、春休みのほとんどを番組編集に費やした。
「田中さんと再生クラブの方々に負けないくらい『たま』に精通した人間になってやる」、「『たま』をもっと多くの人に知ってもらうためには、私がやらなくて誰がする」。意地と妙な使命感がいつの間にか芽生えていた。それからは、制作が楽しくて仕方がなかった。
番組が完成したときは、ようやく形になった達成感と、一刻も早く多くの人に番組を見てもらいたい高揚感でいっぱいだった。このときの気持ちを一生忘れることはないだろう。番組制作は自分を変える機会にもなった。もともと私は人に何かを任せるのが苦手だった。人に任せて自分の納得のいかない出来になるくらいなら、自分の仕事量を増やしてでも全部ひとりでやってしまいたい性格だった。今回の番組制作を通して、改めてコミュニケーションの大切さを思い知った。
取材対象者からうまく話を聞きだすにはどうすればいいか。欲しい映像を撮るためには、リポーターにどんな指示を出せばいいか。スタッフの士気を高めるには、ディレクターである私がどういう風に振る舞えばいいのか。カメラの扱い方や編集技術を含め、学んだことを挙げればキリがない。
「たま」を通して、いろんな出会いがあった。何より、戦後の歴史に翻弄された電気自動車と、日本の復興を信じて開発に奮闘したエンジニアたちの熱い思いに触れることができた。多くのこと学ばせてくれた「たま」に感謝したい。

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by tamatanweb | 2016-07-01 00:00 | 制作日誌