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無料のおもしろネタ画像『デコじろう』用アイコン02 卒業制作「八王子シイタケ」を通して ―大学生活の最後に出会ったもの―   

総合政策学部政策科学科4年 渡邉恭子


 
私が所属するFLP松野良一ゼミでは、卒業制作として、毎年四年生が「多摩探検隊」の三月放送に取り組むことになっている。今年も例外ではなく、四年生が映像制作を行うこととなった。そして、私は番組プロデューサーとしてこの活動に関わった。

多摩地区の特産物についての番組を作りたいと思い調べてみると、東京都八王子市は、都内でシイタケの生産量が一位であることがわかった。シイタケは寒い地域で育ちやすい。そのため、寒暖差の激しい八王子市はシイタケ栽培に適しているのだ。そこで、私たちは八王子市のシイタケを取り上げることにした。

さらに、八王子市のシイタケについて調べを進めてみると、八王子市のシイタケの九割は、全国では二割程度しか採用されていない「原木栽培」で生産されている。「原木栽培」とは、自然に育ったナラやクヌギなどの木に、菌を植え付けて栽培する方法である。自然の状態で育てるため手間がかかるが、香り豊かで弾力のある美味しいシイタケができる。その八王子市のシイタケ農家の中でも、創業四六年という長い歴史を誇る「斉藤椎茸園」の存在を知った。「斉藤椎茸園」は、過去に「東京都知事賞」一〇年連続受賞という輝かしい実績を持つ農家だ。現在は、一代目の一作さんの後を引き継ぎ、二代目の富次さんが中心となって、専業農家として家族四人でシイタケ栽培に励んでいる。全国的に農家の数が減っている中、今でも家族全員で支え合っている農家は少ない。「シイタケに対する並々ならぬ熱意があるに違いない」と思い、取材をするため、実際に斉藤椎茸園を訪れた。

話を伺ってみると、やはり色んな苦労があることがわかった。特に近年は、中国産の安価なシイタケが大量に輸入されるようになり、売上が伸び悩むようになっているそうだ。それでも、「たくさんの人に原木栽培のシイタケのおいしさを知ってもらいたい。味には自信があるんです」と、富次さんは熱く語ってくれた。

話を伺ってみると、やはり色んな苦労があることがわかった。特に近年は、中国産の安価なシイタケが大量に輸入されるようになり、売上が伸び悩むようになっているそうだ。それでも、「たくさんの人に原木栽培のシイタケのおいしさを知ってもらいたい。味には自信があるんです」と、富次さんは熱く語ってくれた。

逆境にも負けず、シイタケ栽培に誇りを持って挑戦している斉藤さん一家の熱意や家族の絆を伝えたい...―。私たちはこのテーマで番組制作を行うことにした。番組では、リポーターが斉藤椎茸園でシイタケ採りに挑戦し、その場で、ほくほくの焼きシイタケを試食する。そして、リポーターが家族四人と交流し、話を聞き、原木シイタケの魅力と生産者のシイタケに対する熱い思い、斉藤さん一家の絆を描いた。

また、さらに取材を進めていくと、二代目の富次さんが婿養子だということがわかった。婿に入った当初、富次さんはサラリーマンだったというが、ある日退職し、シイタケ農家を継ぐ決心をしたのだと言う。

富次さんは、当時のことをどう思っているのか。そう思った私は富次さんに尋ねた。
「サラリーマンは、収入は安定してるけど、僕じゃなくてもいい仕事です。それに家族に働いている姿も見せられず孤独でしょう。その点、シイタケ栽培は家族全員で仕事ができる。自分が必要とされていることを心から実感できるんです。それに、収入についても、自分の頑張りがそのまま反映されるのでやりがいがある。この道を選んで本当に良かった...」

笑顔でこう語る富次さんの目に迷いはなかった。そういう質問をしたことの方がむしろ恥ずかしかった。大学生活最後の取材で出会った斉藤さん一家から、私は大切なことを学んだ。世の中には多種多様な生き方があり、何を大切にして生きていくかは、人の価値観によって変わっていくものだということを。

大学四年間、多摩探検隊の取材で多くの人に出会い、沢山の人生に触れてきた。普通に大学生活を送っていれば、同年代の友達としか出会えなかったけれど、取材という活動を通して、当然ながら比較的幅広い年齢の方々の人生模様を知ることになった。多種多様な人生を歩んできた様々な人々から、「数ある人生の選択肢を自分の納得のいくように進むべきだ」という、生きていくためのヒントをもらってきたような気がする。

挫折や苦労を乗り越えて、何か一つでも誇れるものがある人の姿は、私にはいつもまぶしすぎるくらいだった。私はこの春、大学を卒業し、就職する。大学生活におけるいろんな出会いを誇りにして、これからまた、長い人生を歩んでいこうと思う。

by tamatanweb | 2012-05-01 00:00 | 制作日誌

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