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無料のおもしろネタ画像『デコじろう』用アイコン02 人の支えで乗り越えられた壁   

法学部法律学科三年 西巻郁里

 人は、その漢字の通り支えられながら生きている。ひとりでは出来ないことが、チームを作って支え合うことで出来るようになる。今までもそう頭では分かっていたが、実際に人の力をこれほどまでに感じたことはなかった。

今回、わたしは神奈川県川崎市で初めて行われた「たまゆり子ども放送局」で撮影チームを組み、番組ディレクターを務めた。子ども放送局とは、私の所属するFLPジャーナリズムプログラム松野良一ゼミで行っている映像制作活動の一つである。

たまゆり子ども放送局は、川崎市麻生区にある田園調布学園大学で2005年から行われている「ミニたまゆり」というイベントを取材するという形で行われた。ミニたまゆりとは、子どもたちが市民となって大学内に一つの町をつくるというイベントで2014年は2月8日、9日に行われる予定であった。私たちは今回、子どもリポーターにミニたまゆりを体験してもらい、リポートしてもらうという企画を立て、11月半ばからずっと会議を重ね、準備を進めてきた。

 しかし、ミニたまゆり当日、思いもよらないことが起きた。なんと、20年に一度と言われるほどの大雪になってしまったのだ。朝にミニたまゆりのホームページを何度もチェックし、中止にならないことを祈った。雪で遅延した電車に乗って、なんとか会場についた。すると、着くやいなや「本日は13:00までの開催です」との知らせが舞い込んできた。しかも、明日は中止だという。2日間にわたって撮影をする予定で計画を立てていた私たちは大ピンチであった。子どもリポーターたちも不安そうな顔をしていた。しかし大学生の焦りが伝わってしまうと、子どもたちの表情も暗くなってしまう。そう思い、必死に明るく振舞った。

 頭の中はパニックだった。番組ディレクターは撮影や番組の指揮監督のようなものであり、私はみんなが「どうしたらいいのか」を指示しなくてはいけなかった。13:00までに撮り終えられるのはどの部分か、ストーリーを繋げるにはどの部分が必要かを考えた。結局、番組に必要な最低限ところだけをピックアップし、時間内でできるだけ撮影を進めることにした。しかし、問題はそれだけではなかった。子どもたちが働く体験をするのに食堂にあるクレープ屋さんを選んでいたが、イベントが中止になるため最後に何か食べておこうと思う人々で、食堂は大混雑していたのだ。そのままではとてもカメラが入れる隙間はなく、クレープ作りをリポートさせることも不可能であった。その時、プロジェクトに協力してくれていた田園調布学園大学の学生スタッフが、「今から撮影します!少しスペースを空けてください!お願いします!」と声掛けをしてくれた。慣れていない場所で思うように動けない私たちにとって、救いの一言だった。そのおかげで、クレープ屋さんで仕事体験の撮影を、無事終えることができた。

 そうして、途中まで撮影を終えたところでイベントは中止になった。予定の半分以下しか撮り終えていないまま、帰宅しなければならなくなってしまった。今までの準備が全て無駄になってしまうかもしれない、途中までしか撮れなかった映像をどうしたらいいのだろう・・・と、帰りの電車では涙がこぼれてきた。

 次の日、朝から撮影クルーの仲間と話し合いをした。そこで話し合ったのは、「今ある映像をどうやったら番組としてストーリーにできるか」。一晩明けて、冷静に考えられるようになっていた。みんなが真剣に考え、後日にミニたまゆりのスタッフにインタビューをしたらいいのではないか、準備をしてきた人達の苦労を聞き出せばもっと面白くなるのではないか、とたくさんの意見を出してくれた。私はディレクターという立場にありながら、みんなにこれほどまでに助けられていることに心底情けなく、同時に感謝していた。

後日、ミニたまゆりの子ども市長や、イベントを統括していた教授を子どもリポーターにインタビューしてもらい、「中止になった」ことを逆手にとった番組を作ることができた。こうしたことも、一重に子ども市長やリポーターとその親御さん、教授、学生スタッフの皆さんに協力してもらえたからこそだった。私が今回「大雪」というどうすることもできない壁にぶつかった中で一番感じたことは、多くの人に助けられたからこそ、壁を乗り越えられたということだ。たくさんの人に支えられて、ようやく番組ができた。そのことを決して偶然と思うことなく、今度は私が人の支えになりたいと思った。



by tamatanweb | 2014-08-01 00:00

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